
画像は、立川市富士見町にある「富士塚」を南東から見たところです。遺跡地図には未登録の塚で、墳頂部は浅間神社となっています。
この塚は、富士浅間神社の神を祭り、江戸時代に盛んに行われた「冨士講」の人々により築かれた塚であるとされていて、「富士塚」と呼ばれています。しかし、立川に冨士講の話が残されていないことや、この周辺から須恵器らしき土器片が採集されたこともあり、古墳ではないかとする考えもあるようです。
『立川市史 上巻 』(昭和43年発行)には下記のような記述が見られます。
立川市富士見町1丁目56番地に存在する富士塚については古墳であるか、江戸時代に流行した浅間講の塚であるか、いまだに疑問を有する塚であるが、最近古老の口伝に江戸時代に塚として盛土したらしいという古文書があると聞いているが未見である。しかしながら浅間講の塚とも、残堀川開さくの残土を盛土したとも聞いていないし、前述の古文書の裏付けがない以上、一応古墳と考慮して今後の研究にまたねばならない。
鈴木家文書の整理の際、何等かの富士塚に関係ある文書の出現を期待したいと考えるものである。
なお、古老の追想によれば、昭和15~16年頃富士塚の周囲(当時桑畑)の畑地より土師器らしい破片を採集をし得たということである。従って学問的基礎づけはないが、秋多町雨間の大塚と地形上、ならびに位置、規模の点で類似するが、私達は古墳という見解を持っている。
(『立川市史 上巻 』227~228ページ)

また、この「富士塚」のある立川市富士見町に伝承する説話として「でえだらぼっち」伝説があります。この伝説とは、頭が雲の中に隠れて見えないくらいの大男である「でえだらぼっち」が下駄を履いてのっしのっしと歩いてきたそうで、現在の立川市富士見町あたりまで歩いてきたところで下駄の歯の間に土が詰まってしまったので、大きな足をふるって下駄の土をぼとりと落とした、というお話です。この、落ちた土によって出来た塚が「富士塚」であり、下駄に土を持っていかれて出来た穴に水がたまったのが富士見町3丁目にある弁天池であるといわれています。
この伝説は、「大塚古墳」のあるあきる野市雨間のほか、多摩地方に広く残されているようです。近年の調査により、古墳ではなく塚である可能性が高いといわれている「大塚古墳」と、墳形や位置、規模の点で類似するというこの立川市の「富士塚」が、やはり古墳ではなく塚である可能性も大きいようにも思います。

立川市教育委員会により現地に立てられた説明板には、この塚の頂上から富士がよくみえることから富士塚と呼ばれるようになったのではないかとの説もありました。ひょっとしてまだ噴火していたかもしれない大昔の富士山は、人々の目にどのように映っていたのでしょうか。。。

立川市にはもうひとつ、富士塚ではないかといわれている築山があります。画像は、その「金比羅山」を南から見たところです。この金比羅山は山と呼ばれていますが人工の築山なのだそうで、高さは15~16mほどもあります。地元には玉川上水を掘ったときの土砂を盛って築いたという言い伝えもあるそうです。

現地の説明板には下記のように解説されていました。
金比羅山の由来
立川市唯一のこの山がいつ頃築かれたのか、はっきりしていませんが安政年間(1854~1860)に砂川村の名主砂川家が願主となり、頂上に富士浅間、中段に金比羅神社、下段に秋葉神社を勧請したと伝えられています。
この金比羅山は江戸時代に流行した富士塚ではないかといわれています。
秋葉神社は遠州(静岡県)秋葉山にある火難水難よけの神として古くから知られています。近世になって徳川家康の命によりご神体(三尺坊権現)が小田原に移され、その土地の富士浅間の神として合祀され富士信仰との融合がはかられたわけです。秋葉神社と金比羅神社とが並べて祀られる例は各地に見られ、富士、金比羅、秋葉の三神は互いに関係を持ちながら、この山に置かれたといえましょう。特に金比羅様は玉川上水で舟運が行なわれ(近くに巴河岸跡)た頃、舟神様として祀られ、それからこの山は金比羅山と呼ばれるようになりました。(現地説明板)


下段にあるとされる秋葉神社は実際には山の中腹に見られます。そして、山の頂上に富士浅間と金比羅神社が祀られています。。。
<参考文献>
立川市史編纂委員会『立川市史 上巻 』
国立市史編纂委員会『国立市史 上巻 』
多摩地区所在古墳確認調査団『多摩地区所在古墳確認調査報告書』
立川市教育委員会『立川の歴史散歩』
現地説明板
- 2013/05/24(金) 00:51:52|
- 立川市の古墳・塚
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こんにちは。
そんなお話からできた弁天池があるのですね!勉強不足でした。。
弁財天は祀ってある所なのでしょうか。。?
- 2013/05/27(月) 20:52:49 |
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- 紅一点 #-
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紅一点さま。コメントありがとうございます。
弁財天が祀ってあるかどうかはわかりません。でも弁天池というからには弁財天が祀ってあるような気もしますが、弁天池には行ってみていないのです。面目ないです。。。
「でえだらぼっち」の伝説は都内各地に残されているようなので、ここに絞って調べてみるのも面白いかもしれませんよね。
- 2013/05/28(火) 23:49:47 |
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- ご〜ご〜ひでりん #hzwp2T5Q
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