
今回は、宇都宮市長岡町に所在する「谷口山古墳」の探訪の記録です。
この古墳は、宇都宮中心街から北方へ約4kmほどの宇都宮丘陵上に立地しており、この丘陵の両脇には東に田川、西に釜川が南流しています。
画像の丘陵中腹に見える「インマヌエル教会」の建物の背後に古墳は所在します。
さっそく見学しましょう。

教会にも駐車場がありますので、車で古墳の目の前まで行くことも可能なのですが、丘陵裾の長岡街道沿いにも駐車場があったので、私はそこに車を停めて階段を登りました。(駐車場の手前には「市指定・谷口山古墳」と書かれた看板が設置されているのですぐにわかります。)

ちなみに、谷口山古墳が所在する宇都宮丘陵上には、ほかにも多数の後期古墳が存在しています。
谷口山古墳の北方には「北山古墳群」があり、この地域で最初に横穴式石室を採用したとされる「権現山古墳」が所在します。その後、この古墳群では「宮下古墳」、「雷電山古墳」と前方後円墳が3代にわたって築造され、さらにはその周辺に多数の円墳が築造され、この地域の古墳時代後期の中心的な位置を占めています。
これとひとつ谷を挟んだ丘陵上の南端部分に、谷口山古墳を中心とする「谷口山古墳群」があり、さらに西側の丘陵上には、全長50mの前方後円墳である瓦塚古墳を中心とした「瓦塚古墳群」が存在します。
ちなみに両古墳群の規模・構成等には大きな違いがみられるそうですが、両者はがひとつの古墳群で、谷口山古墳群がその中の1支群とみる考え方もあるようなので、このあたりは今後の調査の進展により、わかってくるのかもしれません。
これが谷口山古墳です。
古墳は大きく削平されて原形は留めていないようですが、それでも墳丘の一部は残されているようです。
墳丘東側がわずかに残されているという状況でしょうか。
古墳は、推定直径29mの円墳で、主体部は片袖型の横穴式石室で、規模、玄室長5.5m、最大幅1.7m、最大高1.57m、羨道長1.5m、最大幅0.8m、墓道長6.0m、底面最大幅0.5mの石室が開口しています。

石室の周囲は柵で覆われており、普段は入口が施錠されています。
教会でお願いすれば柵は開けてもらえますが、石室内は崩落しかかっており、内部に入ることはご遠慮くださいということでした。

石室の様子です。
片袖型の横穴式石室で、玄門は立柱石と楯石から成る組み合わせ式であり、玄室内には境石を持ち、複室的な構造です。
またこれに伴い床面の状況も異なり、板石のみの奥壁側と板石と河原石の組合わせからなる玄門側とに分かれています。
玄門側の床面が2層に分かれ、第1次床面が板石と河原石により第2次床面に河原石が敷かれていることから、最低2回の追葬が考えられるそうです。

側壁左側は崩落が進んでいて、崩れかかった側壁は膨らんでしまっています。
傾いた石材をつっかえ棒で支えているような状況ですが、これは先の東日本大震災で崩れたわけではなく、かなり前から少しずつ崩れてしまっているようです。
おそらく、古墳を重機で削平した際にすでに崩壊は始まっていたのではないか?とも思えますが、最近は大きな地震も少なくありませんし、いずれは崩れ落ちてしまうかもしれません。。。

天井石の様子。
手前の天井石が傾いてしまっています。

敷地内には宇都宮市教育委員会による説明板が設置されています。

おそらく、かつては古墳の周囲を取り巻く道路の部分も含めて墳丘であったはず。
石室の周囲のわずかな覆土を除いて、墳丘ははほぼ削平されているようです。

北西から見た谷口山古墳です。

さて、谷口山古墳の南側の丘陵斜面には、かつてはほかに5基の円墳が存在したとされています。
宇都宮市教育委員会発行の『宇都宮の遺跡』の分布図にも谷口山古墳以外に5基の円墳が記されているのですが、この分布図ではそもそも谷口山古墳の位置が北にズレていて正確に記されていない状態なので、5基の円墳の位置が正確に記されているとは思えません。
そこで、台地の南側斜面になにか古墳の痕跡が残っていないかと期待して周囲を観察しました。

階段の途中にけもの道のような細い道が見えたので、進んでみましたが、、、

すぐに藪になってしまって、よくわかりませんでした。笑。
古墳らしき遺構は存在しないように感じます。。。

南東から見たところ。
このあたりの、舌状台地の先端周辺に古墳があったのではないかと思いますが、やはり、明確に古墳であると判断できる地形は確認できません。
昭和58年(1983)に発行された『宇都宮の遺跡』に「円墳5基が確認できる。」と書かれていて、教会が建設された後も円墳5基は残されていたようなのですが、その後に削平されてしまったのかもしれません。。。
<参考文献>
宇都宮市教育委員会『宇都宮の遺跡』
宇都宮市教育委員会『宇都宮市遺跡分布地図』
宇都宮市教育委員会文化課『久部愛宕塚古墳・谷口山古墳・御蔵山古墳』
人気ブログランキングへ
- 2023/02/16(木) 23:15:45|
- 宇都宮市の古墳・塚
-
| トラックバック:0
-
| コメント:2
こんばんは。
これはこれは見事ですね。しかも開口部がそのままとは!
驚きました(◎_◎;) スゴイ
先日、十条富士塚を観に行きました。だいぶ工事も進んでいますが、何だか大きな滑り台のような塚になっていました。これから土をかぶせるのでしょうかね(^▽^;)
- 2023/02/26(日) 23:24:53 |
- URL |
- torikera #frK3hhYY
- [ 編集 ]
こんにちは!
情報ありがとございます!
十条富士塚はしばらく見に行っていませんでしたが、工事が進んでいるのですね。
近々見に行って見ます。
- 2023/02/28(火) 17:13:30 |
- URL |
- ご〜ご〜ひでりん #G67hs.TE
- [ 編集 ]