
「前原塚西古墳」は、狛江市猪方3丁目に所在したとされる古墳です。
古くは、昭和35年(1960)に当時の狛江町全域で行われた古墳の分布調査により把握されており、『狛江市の古墳(Ⅰ)』に掲載されている、調査当時に作成された『狛江古墳群地名表』には、92番の「久保塚西方」古墳という名称で、円墳として紹介されています。同書には「横穴式石室の石材と思われるもの存在する 天井石2.5×1.4mの範囲 台地南側に近く位置する」とあり、当時、墳丘は削平されていたものの、埋葬施設の石材が残されていたようすが書かれています。同書には、大きな墳丘が残存する久保塚(現在の前原塚)の手前に小さな小山のように残されている前原塚西古墳の写真が掲載されています。
その後、昭和51年(1976)の調査の際にはその石室も消滅していたとされ、「1960年調査時、横穴式石室の石材と思われるものが存在し、積石状を呈していたらしいが、現在は壊滅」と書かれています。また、平成7年(1995)に多摩地区所在古墳確認調査団により発行された『多摩地区所在古墳確認調査報告書』にも、消滅した古墳として「文献101(狛江市の古墳Ⅰ)によると昭和35年の分布調査の際に横穴式石室の石材と推定されるものが存在していたとあるが、横穴式石室であったのか否か定かではない。」と書かれています。『狛江市史』の「狛江古墳群一覧表」では6世紀末以降の古墳であると推定されています。
出典:国土地理院ウェブサイト(http://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=194248&isDetail=true) 画像は、国土地理院ウェブサイトより公開されている、昭和23年に米軍により撮影された「前原塚西古墳」と「前原塚古墳」周辺の空中写真です。わかりやすいように跡地周辺を切り取っています。画像の右側に比較的大きな墳丘の前原塚古墳があり、その左側にかなり小さな影ですが、前原塚西古墳らしき姿を捉えることができます。

横穴式石室らしき石材が積まれていたという場所は、おそらく画像の周辺ではないかと思われますが、すでに地上に痕跡を見ることは出来ないようです。
<参考文献>
狛江市史編さん委員会『狛江市史』
狛江市教育委員会『狛江市の古墳(Ⅰ)』
多摩地区所在古墳確認調査団『多摩地区所在古墳確認調査報告書』
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- 2014/12/15(月) 00:53:35|
- 狛江市/狛江古墳群(猪方)
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