
「下谷保古墳群」は、立川段丘縁辺に位置しており、東西700m、南北150mに分布する古墳群です。この周辺地域にはかつては多数の古墳が存在していたといわれており、『町勢要覧』沿革Ⅰには「谷保天満宮の東方台上に古墳群がある。以前相当多数あったらしいが、開墾されてしまって現在では少し残っているばかりである。」と書かれています。古墳群は梅林遺跡や下谷保遺跡、谷保東方遺跡にまたがっており、現在までに下谷保Ⅰ~10号墳と谷保古墳の11基の古墳が確認されています。
「下谷保10号墳」は平成23年12月に行われた共同住宅建設における試掘調査により埋葬施設と周溝が検出され、その後の平成24年に本調査が行われています。
この古墳の周溝は北側半分が検出されていますが、その形状から細長い不正円形(楕円形?)をしていたようです。通常、古墳の周溝は墳丘と共に円形を描きますから、この10号墳は個性的な古墳です。また、特筆すべきは埋葬施設に凝灰質砂岩と推測される切石切組積み石室が採用されていることです。10号墳に見られるような切石切組積石室は、多摩川中流域ではこれまで5例しか発見されていないそうですから、かなり希少な古墳であるといえます。一体どんな被葬者が埋葬されていたのでしょうか。
石室内からは人骨歯牙2体分が検出されたものの人口遺物はなく、周溝内より須恵器坏蓋・平瓶が1点ずつ出土しています。
下谷保10号墳の跡地には、すでに古墳の痕跡は何も残されていません。現地説明会が行われたら見逃さずに見学に行こうと思っていたのですが、行われなかったようです(行われたのかもしれませんが)。
<参考文献>
国立市教育委員会『東京都国立市 市内遺跡緊急調査報告5 平成21~23年度』
くにたち郷土文化館『くにたち発掘 ~最近の発掘から~』
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- 2016/05/23(月) 01:26:58|
- 国立市/下谷保古墳群
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