
大田区田園調布5丁目に所在したとされるのが「西岡28号墳」です。『東京都遺跡地図』には大田区の遺跡番号17番の古墳として登録されています。
この古墳は、後に大田区立郷土博物館の館長を努める西岡秀雄氏により行われた荏原台古墳群の分布調査により把握されています。この調査報告が掲載されている「荏原台地に於ける先史及び原始時代の遺跡遺物」『考古学雑誌 第26巻 第5号』には次のように紹介されています。
第二十八號古墳
(所在位置)舊地名 東京都荏原郡東調布町大字上沼部
新地名 東京市大森區田園調布四丁目一二五、池田氏邸内
(型式)圓型墳
(採集者氏名及び出土品等)石川氏 六鈴鏡・直刀・鉄蔟・馬轡等 大正十五年
(現況其の他)道路開墾工事の爲切り崩され、現在は全く原形を留めない。高さ約四•五米。堀梅天氏出土品所蔵。
(『考古学雑誌 第26巻 第5号』315~316ページ) 画像の道路の周辺に古墳が存在したのではないかと思われますが、戦前の宅地開発により消滅しており、古墳の痕跡を見つけることは出来ませんでした。おそらくは、道路の建設のために台地ごと切り崩されており、周溝も含めて痕跡は残されていないのかもしれません。

多摩川流域で最古とされるこの古墳の横穴式石室からは多くの副葬品が出土しており、この古墳から出土した六鈴鏡や世田谷区の「御岳山古墳」から出土した七鈴鏡は周りに鈴の付いた特徴のある鏡で、この鏡の出土例が群馬県を中心とした北関東に多くみられることから、ここが製作地ではないかと考えられているようです。
それにしてもこの周辺は坂道が多く、この日もテレビの企画で坂道巡りをする団体と出会いました。坂道マニアにはたまらない地域かもしれませんが、古墳マニア(笑)にとっては、地形を把握してから歩かないと登ったり降りたりとかなり苦労をすることになります。。。
<参考文献>
西岡秀雄「荏原台地に於ける先史及び原始時代の遺跡遺物」『考古学雑誌 第26巻 第5号』
東京都教育委員会『都心部の遺跡』
東京都教育委員会『東京都遺跡地図』
大田区立郷土博物館『大昔の大田区』
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- 2017/05/16(火) 00:23:59|
- 大田区/田園調布古墳群
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