「野毛大塚古墳」の南側、世田谷区野毛1丁目から同2丁目にかけての一帯からは、発掘調査により多くの古墳が確認されています。これらの古墳は「野毛××号墳」と命名されており、「下野毛遺跡」と「下野毛根遺跡」の2つの遺跡内に存在します。このうちの、下野毛遺跡は世田谷区の南側、多摩川中流域左岸の国分寺崖線上に立地しています。標高は約33メートル前後で、上用賀付近に源流がある矢沢川によって形成された台地上に位置しています。昭和30年に第一次調査が行われ、その後16次にわたって発掘調査が行われています。

画像は、世田谷区野毛2丁目の「野毛2号墳」の跡地周辺を西から見たところです。『東京都遺跡地図』には世田谷区の遺跡番号307番に登録されている古墳で、野毛大塚古墳の南西側に並ぶ帆立貝形古墳です。
この古墳は、平成2年(1990)から翌年にかけて行われた共同住宅建築に伴う事前調査(下野毛遺跡第6次調査)により周溝の一部が検出され、この時点では直径16メートルの円墳ではないかと推定されていました。この調査では周溝の底面を掘り込んで埴輪を組み合わせてお棺に再利用したという「埴輪棺」が出土しています。また、埴輪は円筒埴輪のみが出土しており、この埴輪の生産地は、粘土の蛍光X線分析から群馬県藤岡市の本郷埴輪窯で生産されたと推定されているそうです。

古墳はその後、平成29年6月24日から10月3日に掛けて行われた下野毛遺跡第16次調査のA区から周溝の続きが発見されています。この調査により、それまで円墳ではないかと考えられていた野毛2号墳は、帆立貝形古墳であることが判明しています。

画像が、第6次調査で出土したという円筒埴輪です。平成29年10月28日に行われた現場見学会において公開されていたものです。

下野毛遺跡第16次調査は来年の3月30日まで続くようです。
果たして、さらなる未発見の古墳が発見されることになるのか、楽しみですね。

この第16次調査B区の北側からは方形に廻る溝が検出されており、この溝は土の様相から古墳時代のものであり、方墳の可能性が高いと考えられています。野毛古墳群では13基目の古墳であり、「野毛13号墳」と命名されています。画像はこの野毛13号墳を南西から見たところです。

角度を変えて、南東から見た野毛13号墳です。平成29年10月28日に行われた現場見学会で公開された際の古墳のようすです。この古墳の墳丘は完全に消滅していたことから主体部は検出されず、また埴輪や葺石の存在も不明であるようです。

上空から見た野毛13号墳のようす。現場見学会で公開されていた写真です。
これまでに確認されていた、野毛大塚古墳を除く11基の古墳はすべて円墳であると考えられてきましたが、第16次調査で検出されたA区の2号墳は帆立貝形古墳、B区の13号墳は方墳と、大発見が続いているようです。続けて行われるC区の調査ではどんな発見が待っているのか、とても楽しみです。。。

画像は、世田谷区野毛2丁目の「野毛3号墳」の跡地周辺のようすです。『東京都遺跡地図』には世田谷区の遺跡番号308番に登録されている古墳です。
この古墳は、平成3年(1991)に行われた共同住宅建築に伴う事前調査(下野毛遺跡第7次調査)により主体部が検出されており、過去の試掘調査により検出された周溝と考えられる落ち込みと位置から、墳丘規模は外径約28mの、墳形は不明であるものの円墳と考えられているようです。
主体部は礫槨で、組み合わせ式の箱形木棺が推定されており、規模は長径167cm、短径31cm、高さ26cm以上を測ります。

画像は「野毛7号墳」の跡地周辺のようすです。7号墳の跡地は画像のさらに奥の方ですね。
この古墳は、平成10年(1998)の個人住宅建設の伴う事前発掘調査により周溝の一部が検出され、墳丘径は推定で約19.6m、周溝を含めた外径は22.6mの円墳であることが判っています。ブリッジを持つ可能性が高く、時期を特定できる遺物は出土していないものの、築造は覆土から5世紀末から6世紀初頭と推定されています。

「野毛8号墳」は、平成11年(1999)から翌12年にかけて行われた個人住宅建設に伴う事前発掘調査により確認された古墳です。調査当時にすでに墳丘は削平されて遺存せず、周溝の全体の約6分の1が検出されています。
墳丘径は推定で約22.5m、周溝を含めた外径は29mの円墳であることが判っています。ブリッジを持つ可能性が高く、時期を特定できる遺物は出土していないものの、築造は覆土から5世紀から6世紀初頭と推定されているようです。

「野毛12号墳」の跡地のようすです。発掘調査が終わった後しばらくは、画像のように更地となっていたのですが、その後宅地化が進み、現在の景観は大きく変わっているようです。
以下、次回に続く。。。
<参考文献>
東京都教育委員会『東京都遺跡地図』
『1990年度 世田谷区埋蔵文化財調査年報』
『1991年度 世田谷区埋蔵文化財調査年報』
『1998年度 世田谷区埋蔵文化財調査年報』
世田谷区教育委員会・東京都スポーツ文化事業団・東京都埋蔵文化財センター『下野毛遺跡 発掘現場見学会資料』
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- 2017/12/23(土) 21:14:57|
- 世田谷区/野毛古墳群
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| コメント:2
こんばんわ。
野毛古墳群というと野毛大塚、御岳山、八幡塚と帆立貝あるいは造り出し付きの円墳というイメージが強いですが、13号墳の方墳というのは珍しいですね、
もし、方形周溝墓だとしても古墳築造の前代に有力なお墓があったことになり、これからの調査が期待されますね。
- 2017/12/25(月) 06:02:50 |
- URL |
- kame-naoki #-
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kame-naokiさま、こんにちは。
私も、13号墳の方墳(方形周溝墓?)の発見はびっくりしました。
また、野毛大塚、御岳山、八幡塚といった首長墓と考えられていた古墳以外の、小型の帆立貝式古墳の存在にも驚きました。
大きな発見があれば来年にも見学会があるかもしれませんし、楽しみです。
- 2017/12/25(月) 12:20:16 |
- URL |
- ご〜ご〜ひでりん #gQ5tgH1Y
- [ 編集 ]