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古墳なう

「大都市、東京の失われた古墳を探せ!」をテーマに、 ご〜ご〜ひでりんが実際に現地に足を運んで確認した古墳や塚の探訪記録。

「一本松」

「一本松」

 画像は、港区元麻布1丁目に所在する「一本松」を北東から見たところです。『東京都遺跡地図』には未登録の塚ですが、この一本松にまつわる多くの伝承が残されており、また古墳ではないかという説もある、とても興味深い塚です。

 慶長5年(1600)、美濃国関ヶ原(現在の岐阜県関ヶ原町)において徳川家康率いる東軍が石田三成率いる西軍を打ち破ったとされる戦いが「関ヶ原合戦」ですが、これに先立つ同年8月23日、徳川方の東軍による岐阜城(岐阜市)への攻撃が行われます。この時の城主は一代の英雄、織田信長を祖父に持つ織田秀信でしたが、圧倒的な兵力の東軍により岐阜城はわずか1日で陥落。この際、徳川方の諸大名はその戦功を証明するため、討ち取った敵の首級を徳川家康のいる江戸城に送り、この首級を埋葬したといわれているのが「麻布の首塚」です。
 一説には「麻布の一本松」がこの首塚ではないかとされており、また古代の古墳ではないかとする説もあるようで、昭和16年(1941)に東京市麻布區より発行された『麻布區史』の894ページには「一本松 一本松町二十九 幹圍一・七米樹高十二米あり、大きな松ではないが、地名の起源をなした名松として有名である。尤も現存木は何代目かに當り、數十年前の植繼ぎに係るものである。(中略)松のあるところは曾て古墳であつたと云ふ説もあるが、現在では既に其の徴證を認めることが出来ない。ただ土地の概況からは古墳のありそうなところと見受けられる。」と、この一本松が古墳である可能性について示唆しており、また同書の903ページには首塚について「首塚 一本松增上寺隱居屋敷の邊で、關ヶ原役に岐阜より到着せる多數の首級を埋めた處である。」と書かれています。
 また、昭和35年(1960)に東京都港区より発行された『港区史 上巻』には、216ページに「スエ-デン大使館東前あたりに慶長五年首を埋めたという首塚があり、戦争前まで家が建たなかつた。」とあり、また218ぺ-ジには、「このあたりに慶長五年首を埋めた首塚があるともいうが麻布西町らしい。」とも書かれており、また別のページではこの塚の所在地について「麻布西町6番地辺」と特定しています。これらの情報からすると、首塚は一本松とは別の場所に存在したのではないかと考えられますが、学術的な調査が行われていない現状では、真相はまったくわからないようです。


「一本松」

 現在の一本松もわずかに塚状に小高くなっているようですが、古墳と思えるような痕跡は特に残されていないようです。『港区史 上巻』217ぺ-ジには「名の起りは現在も植え継がれている町中央の一本松より来ているが、この松については源経基に関する伝説があり、また、むかし松之宮様という京都から下つた人がここで亡くなり、衣冠と遺体を埋め印に植えたものであるという説もある。この説では、その供の小野某が、そばに如意輪観音の木像を安置して草堂を結んでいたが、いつのころか、そばの長伝寺へその観音は移されたとし、一本松というのは、この松の葉が一葉だからとも云つている。」と、この一本松の伝承について書かれています。


「一本松」

 塚上には「一本松の由來」と刻まれた石碑が立てられており、この碑には「江戸砂子によれば天慶二年西紀九三九年ごろ六孫源経基平将門を征服しての帰途此所に來り民家に宿す 宿の主粟餃を柏の葉に盛りさゝぐ翌日出立の時に京家の冠装束を松の木にかけて行ったので冠の松と云い又一本松とも云う 注 古樹は明治九辰年焼失に付き植継 昭和二十年四月又焼失に付き植継」と、この一本松の伝説について刻まれています。
 ほかにこの一本松には小野篁が植えたという説、徳川家康が植えたという説、嫉妬深い女房が呪詛のために植えたという説、秋月邸の羽衣の松という説、古来一葉の松だったという説、氷川神社の御神木という説など、かなり多くの言い伝えが残されているようです。

 『東京都遺跡地図』には同じ台地上の南西側、有栖川宮記念公園内に2基の古墳が登録されているようですし、『都心部の遺跡』では古地図の検証により、現在のドイツ連邦共和国大使館の敷地内に所在する古墳の可能性が考えられる塚の存在を指摘しています。『麻布區史』にも書かれているように、立地的にはこの一本松が古墳である可能性は十分に考えられるのではないかと思いますが、残念ながら真相はわかりません。。。

<参考文献>
東京市麻布區『麻布區史』
東京都港区役所『港区史 上巻』
俵元昭『港区史跡散歩』
東京都教育委員会『都心部の遺跡』
東京都教育委員会『東京都遺跡地図』


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  1. 2019/06/03(月) 13:51:22 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

コメントありがとうございます!
そうだったのですね。それは存じませんでした。
塚が削平されているとしても、何らかの痕跡が残されていないものかとまだ調べているのですが、所在地も含めてよくわからないままです。。。
  1. 2019/06/03(月) 19:39:17 |
  2. URL |
  3. ご〜ご〜ひでりん #OsZoF7Es
  4. [ 編集 ]

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