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古墳なう

「大都市、東京の失われた古墳を探せ!」をテーマに、 ご〜ご〜ひでりんが実際に現地に足を運んで確認した古墳や塚の探訪記録。

「二子塚古墳」

「二子塚古墳」

 今回は、川崎市高津区二子6丁目に所在したとされる「二子塚古墳」の探訪記録です。

 この古墳の跡地一帯は多摩川の氾濫原に位置しており、残存する「諏訪天神塚古墳」や「諏訪浅間塚古墳」と合わせて「二子・諏訪古墳群」と呼ばれています。早くから開発の進んだ地域であり、この二子塚はすでに消滅してしまった古墳ですが、多くの文献や古地図等を参考に、その存在が想定される古墳です。
 江戸時代の地誌『新編武蔵風土記稿』には、
 「二子塚 村の南の方に塚二つ並びてあり、其一は塚の敷一段二十歩の除地にて高さ五丈許、形丸く芝山にて樹木なし、故に土人坊主塚などといへり、この塚の土性至てよきゆへに、籠など作るもの多く掘用ゆるに、塚の中より茶碗のかけなどまま出ることあり、此ほとりを字して西屋敷と云、古へ村民住せしよし、ゆへに古き磁器など出るにやあらんといへり、一は少しく東の方へ寄てあり、除地六畝廿九歩、高さは二丈五尺あり、南の方少しかけて、上にわかぎの雑木生立てり」
 と書かれています。
 同書にある、二つの塚が接近していたらしき描写(前方部と後円部)や、全国的に「二子塚(双子塚)」の名称を持つ塚に前方後円墳が多いという状況、また明治時代の測量図の地籍の確認等により、この二子塚は、長軸60メートルほどの前方後円墳だったのではないかと想定されているようです。

 画像は、二子塚古墳の跡地とされる周辺の現在の様子です。
 画像右奥から左に向かって弧を描く道路の形状が、二子塚の後円部の痕跡、ということになるようです。


「二子塚古墳」

 二子塚古墳の跡地周辺を北西から見たところ。
 画像の奥が後円部、右手前が前方部、という状況でしょうか。
 古墳は残念ながら完全に消滅してしまっているようです。


「二子塚古墳」

 大正4年(1915)10月に建立されたという「二子塚舊磧」の石碑です。塚が前方後円墳であるならばちょうどくびれ部のあたりでしょうか。閑静な住宅街の一角に、石碑が今も残されています。
 この塚の土質は、カマドや瓦の原材料として適していたことから、次第に掘り崩されて小さくなり、大正時代には小高い草地となっていたといわれています。おそらく、この碑が建てられた頃には、わずかな高まりしか残されていなかったのかもしれません。


「二子塚古墳」

 「二子塚舊磧」の碑。
 お堂の中に建てられているため、背面は見ることができませんでした。。。


「二子塚古墳」
出典:国土地理院ウェブサイト(https://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=720247&isDetail=true)

 画像は、国土地理院ウェブサイトより公開されている、昭和11年(1936)8月14日に陸軍により撮影された二子塚古墳の所在地周辺の空中写真です。わかりやすいように跡地周辺を切り取っています。
 画像の中央には、うっすらと前方後円墳らしき形状を見ることが出来ます。
 大正時代にはすでに小高い草地となっていたという二子塚古墳ですが、戦前の時点でまだ前方後円の形状は保たれていたようです。。。


「二子塚古墳」

 画像は、二子塚古墳跡地の北西側、二子6丁目1番地に昭和43年(1968)5月に開設されたという「二子塚児童公園」です。この公園内には、二子第5町内会により建立された「史蹟二子塚之碑」を見ることができます。この石碑の背面に刻まれた由来には、二子塚古墳についての記述を見ることができます。

二子塚の由来 大正の中ごろこの二子塚より勾玉耳環などが発掘され溝口の喜楽翁の手を経て県庁に納められたが大正十二年関東大震災に亡失したという伝えられるところによれば旧八王子街道には一王子村より八王子村までがあって其の内二王子村が現在の二子(村)になったという桓武天皇の直裔高望王の八王子口碑と合わせ伝えられているその後今を去る四百年前の天正十年田斐の国武田の伊奈四郎勝賴公の家士小山田備中の守嫡子小山田小治郎宗光は勝賴公が天目山に自刄した後当地に来て二子元家敷に居を構えたという
昭和四十三年五月五日 二子第五町内会長 吉崎キン



「二子塚古墳」

 古墳からは、石碑に書かれている勾玉耳環のほかに、五鈴釧の出土も伝えられているようですが、残念ながらこれらの遺物は散逸しており、所在は不明となっているようです。
 最新の調査事例としては、平成26年3月に行われた戸建住宅建設に伴う発掘調査により、二子塚古墳のものと考えられる埴輪片が1点、出土しているようです。やはり二子塚は間違いなく古墳であり、埴輪が樹立された古墳であったようです。
 今後、周辺の調査の進行により周溝の痕跡が検出されれば、古墳の規模も判明してくるかもしれません。低地に存在した前方後円墳の詳細が明らかにされるのが楽しみです。


「二子塚古墳」

 二子塚児童公園内には、昭和26年から同42年まで実際に川崎市内を走っていたという、トロリーバスの最後の1両が保存されています。
 トロリーバスとは、ガソリンではなく電気で走るバスのことで、ちなみに私は少年時代、黒部ダムに遊びに行った際に乗った記憶があります。環境汚染が叫ばれる中、むしろこのトロリーバスは新しいのでは?などと考えてしまいますが、現役で走るトロリーバスは黒部にしか残されていないようですね。
 画像のトロリーバスは2012年に撮影したものですが、最近立ち寄ったときにはバスの周囲はフェンスで覆われており、近寄ることはできなくなっていました。再整備が望まれますね。

<参考文献>
上田恒三『高津村風土記稿』
川崎市民ミュージアム『加瀬台古墳群の研究Ⅰ』
川崎市教育委員会生涯学習部文化財課『平成25年度 川崎市埋蔵文化財年報』


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  1. 2019/02/26(火) 23:13:53|
  2. 川崎市の古墳・塚
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

古墳なうさん、ひさしぶりです。
古い地図で見ても公園の南の細い道が東に行くほど不自然に曲がっているので、多分、東西の墳丘ではないですかね?1940以降の画像では鮮明にはなるが墳丘は分かりませんね。

※ついにYahoo難民になってしまいました。FC2ブログはマニアックで難しいのですが、開設してあるので、こちらでやろうと思ってます。よろしくお願いします。
  1. 2019/03/10(日) 14:46:57 |
  2. URL |
  3. 形名 #4euuRMTk
  4. [ 編集 ]

お久しぶりです!

おそらく、西側が前方部で東側が後円部だったのだと思います。川崎の低地には多くの古墳があったようですが、ほとんどの古墳が残されていない状況は残念ですね。。。
  1. 2019/03/11(月) 21:22:20 |
  2. URL |
  3. ご〜ご〜ひでりん #Z9kZA9vA
  4. [ 編集 ]

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